ルシアーメイドという個人製作家の作るアコースティックギターの世界をご存知でしょうか?
そこには、数々の名曲で演奏されてきたマーチンやギブソンなどの誰もが憧れを抱くアコースティックギターとは違った世界が広がっています。
ルシアーメイドのギターは、一本一本時間を惜しまず丹精込めて製作されます。
そして完成するギターは、外観、音質、弾き心地ともに製品と言うよりも芸術作品と言っても過言ではないクオリティーをもっています。
また、一人の製作家が製作するギターは年間に10本程度と少なく、楽器店で目にすることは滅多にありません。
まれに楽器店に展示されたとしても、人気のある製作家のギターはすぐに売れてしまうようです。
そんな訳で、今回は私が所有している富山県の個人製作家が作る「FUJII GUITARS」のマーチンやギブソンとは違ったコアな魅力を少しご紹介したいと思います。
音の魅力

音については人それぞれに好みがあるので難しいのですが…、楽器において、一番気になるのはその音質ですよね。
音質についてお話しする前に、上の写真の私のアコースティックギターの材質や仕様が気になると思いますのでザックリとご説明…。
モデル名:FUJII GUITARS OM-cw
TOP→コーカシアン・スプルース
BACK &SIDE→インディアン・ローズウッド
NECK→アフリカン・マホガニー
FRETBOARD→エボニー
BRIDGE→グラナディロ
SCALE→645mm
NUT WIDTH→44.5mm
という、希少価値のある高価な木材は使っておらず、至って普通の癖のない仕様になっています。
それゆえに、製作家の技術力がハッキリ出る仕様でもあります。
この仕様から出てくる音は…。
とても倍音が豊かで、中音域のふっくらした音とロングサスティーンに特徴があると思います。
ですが、中音域の豊かな楽器にありがちな、音の輪郭が曖昧になる事もありません。
基音が太く、だらしなくならず品のある音です。
ピッキングに対するレスポンスも早く、微妙なニュアンスまでしっかり追従してくれます。
どんなジャンルの音楽でも対応できる、癖のない素敵な音です。
各弦のバランスもサスティーンも抜群!
また、部屋中にスーッと広がっていく音の出方も特徴的です。
とても心地良い…。
今まで、マーチンやギブソンなどのアコースティックギターも弾いてきましたが、この音の出方は初体験でした。
自分の弾いている音がモニタースピーカーなどを使わなくても、ある程度わかってしまいます。(笑)
そして、良く鳴るアコースティックギターに付き物のウルフトーン(デッドポイント)。
ウルフトーンの処理も見事で、使える音になっているところも重要なポイントです。
木材の特性を知り尽くした製作家が作るアコースティックギターの音は、実用的で抜け目のない見事な音です。
ところで、個人的な事ですが…。
最近、歳をとったせいかキンキンした硬い高音が苦手になってきたようです。
その為か、ブラジリアン・ローズウッドやココボロといった、希少価値の高い木材を使ったアコースティックギターの硬めの音を心地良く感じなくなってしまいました。
そんな中、このギターは改めてインディアン・ローズウッドの中音域の豊かさって良いな、って思わされたアコースティックギターでした。
そんな私の今の好みを踏まえて読んでいただけたら幸いです。
アフリカン・ブラックウッドの音も捨てがたいと思ってますが…。
使い勝手、弾き心地の魅力

FUJII GUITARSのアコースティックギターは、使い勝手や弾き心地の面でも抜かりがありません。
トラストロッドのカバーがマグネットで付いており、脱着を容易にできるようにしています。
これは、ダウンチューニングや変速チューニング時に、ネックの狂いをすぐに調整できる為の工夫。
ネジ留めだとネジを外すのに工具がいるし、意外に面倒なんですよね。
弾き心地の面でも、ネックは厚みのあるオーバルシェイプですがローポジションからハイポジションまでほとんど厚みが変わらず弾きやすさも抜群!
当然、指版の幅はハイポジションになれば広くなっていきますが、厚みが変わらないのでローポジションとほぼ同じ感覚で弾くことができます。
ボディのカッタウェイとネックのヒールレスジョイントの仕様もハイポジシィンでの弾きやすさに貢献しています。
弦高も低く、エレキギターから持ち替えても違和感なく弾けるのではないでしょうか。
また、ローポジションからハイポジションまで同じ音量で出力されます。
どのポジションでも、力を入れずともスッとスムーズに音が出るのには圧巻。
複数の弦を使った和音弾きから1本の弦のソロ弾きに移った時も、音量変化が少なく安心感があります。
弾いていて心地良く、疲れにくいアコースティックギターです。
高い木工技術が生み出す外観の魅力

FUJII GUITARSのアコースティックギターは、その外観の美しさに魅力を感じる方も多いのではないでしょうか。
ギター全体の曲線が何気なく美しく、重厚感があり独特の存在感を放ちます。
ブリッジなどパーツの一つ一つにも繊細な加工が施されており、楽器の域を超越した芸術性を感じさせます。
このような繊細な加工は、製作家の藤井圭介氏の高い木工技術ならではの粋な演出で、他の製作家のアコースティックギターではあまり見掛けたことがありません。

BACK材とネックヒール部分の処理も美しい。
バインディングもエボニーで施されています。

ヘッドの先端も複雑な形状をしており、曲線がとても美しく仕上がっています。
各部のエッジも丁寧に処理されています。
しっかりと細部まで作り込まれている為か、外観からはとても重厚そうな印象を受けますが、実際の重量は2kg弱と軽量です。
量産されているアコースティックには真似の出来ない部分ではないでしょうか。
最後に製作家の魅力
「FUJII GUITARS」のアコースティックギターは、全て藤井圭介氏一人で製作されます。
藤井圭介氏とは…。
ギター工房スギクラフトの杉田健司氏のもとに10年以上従事し、天才ルシアーと称されるステファン・マルキオーネ氏の工房でアシスタントの経験をされており、2012年に富山県にプライベートの工房を開いて独立されています。
専門誌「Acoustic Guitars Book 50号」にも「FUJII GUITARS 藤井 圭介」として掲載されました。
古典的な製作手法と新しいテクノロジーの両方に等しく興味を持たれている藤井氏。
藤井氏のイメージする最高の形は、柔軟な発想と新旧問わず最善の手段を用いて現実の世界で形となっていきます。
私が「FUJII GUITARS」のギターを弾いて感じた藤井氏のイメージ…。
「アコースティックギターだけでなく音楽が大好きな方」
「研究熱心で真面目で思いやりのある方」
過剰になりすぎず奥行きのある音は、時間を忘れて弾いてしまう魅力があります。
この音に製作家の人柄が表れているのではないでしょうか。
世界的にも非常に評価が高く人気の「FUJII GUITARS」。
是非、ルシアーメイドのアコースティックギターの世界を体験してみて下さい。
日本で製作されるギターのクオリティの高さと凄さに驚くと思いますよ。